伝える人との出会い
最終更新: 2020年1月16日

WAR、というバンドを、私はそれまであまり聴いたことがありませんでした。
1曲だけ「The World Is a Ghetto (世界はゲットー)」という有名な曲が、もとは彼らのヒットだった、という程度です。
代表曲「Why Can't We Be Friends?」が象徴するように、色々な出身、言葉の人たちが集まった、ソウル・ファンクバンドです。
バリバリのヒスパニック、アフロアメリカン、さまざまなカラーが、西海岸らしいスコーンと抜けたサウンド、ラテンぽいリズムとともに、はっちゃけて楽しませてくれるバンドです。
自由で、あったかい。
WARのメンバーに、日本人のハーピスト(ハーモニカ奏者)がいたとは、知りませんでした。
TEX仲村さんという方で、有名なリー・オスカーが脱退後、正式メンバーとなり、年間130本ものワールドツアー、そしてアルバムにも参加しています。
アメリカでは、引っ張りダコのミュージシャンなんだそうです。
久しぶりに彼がツアーで日本に来て、私の馴染みの店でライブをやる、とのこと。
東京ではなく、大自然に囲まれた遠いところに、そんなすごい人が、ライブをやりに来る。
あ、お店のⅠさんが、古くからの友達だったんですね。
もちろん、観に来ますよ。
また、ライブの前日に、Ⅰさんが主催メンバーである、初めてのコーヒーイベントが開催されるんだそうです。
エチオピアに渡ったコーヒーバイヤーの若者がゲストとのこと。
そちらも、たいへんに興味をひかれたので、では「2 days」で楽しませてもらうことに決めました。

テックスさんは、とても気さくな感じの人でした。
アメリカに行って、たった一人で、一流ミュージシャンたちの世界を渡り歩いてきたわけです。
それなりの凄みと、人を寄せつけない雰囲気を想像するものです。
ライブは、だれにも親しみやすい、ラテン音楽のスタンダード曲がほとんどでした。
曲の間の話が面白い。
ラテン音楽の歴史や様々なリズムを、演奏を交えながら、わかりやすく説明してくれます。
もちろん、テックスさんの歌も素敵です。
ただ、ひとたびハーモニカを吹くと、彼の存在感が、グッとオーラを放ちます。
先ほどの、凄み、というやつです。
小さなハープひとつに、すべてが込められている。
世界中どこであろうと、このハープだけで生きて行く「覚悟」。
他に逃げるところはありません。
自らの言葉であり、感情であり、メッセージ、生き方、それは彼の、生きるすべです。
そこには、素直な、つまり、嘘や、飾りのない説得力があります。
彼のハープが奏でる音は、いま自分が生活する、まわりの人々とかかわっていくための、共通の言語です。
その「ことば」を使って、伝えているのは、自身の生活であり、日常です。
生きざま、とでも言うのでしょうか。
スペイン語で、Vida(ビーダ)と言います。
ライブが終わって、テックスさんのCDを買い、サインをしてもらいました。
サングラスをはずすと、とても優しそうな目をしていて、気さくに話をしてくれました。
二言三言、スペイン語も交わしました。
そして、Ⅰさんが、昨夜のコーヒーイベントに出演していた、バリスタの方が来ているので、ぜひ紹介したい、と、店の入り口あたりに案内してくれました。
それは私にとって、次の世界へと足を踏み入れるための、大きな入り口の扉だったのです。
