仲間との出会い

最終更新: 1月9日

前にお話しましたが、私は中南米をはじめとして、世界中の音楽が大好きです。

ほとんどの人が知らないような、地域や時代の音楽、ミュージシャン、歴史まで、けっこう頭に入っています。

そんな私の「偏ったデータベース(友人がこう表現しました)」と、注釈なしで会話ができる数少ない仲間が、那須に住んでいます。

彼は、山の上の方で、とても美味しい蕎麦屋さんを営んでいます。

音楽への愛情、深い知識と幅の広さ、探究心は私の及ぶところではありません。

もちろん、レコードのコレクションもかなりのものです。

私は初めて、昔のSP盤、というものをここで体験しました。

1930〜40年代頃の、見た目はレコードですが、私たちの知っているLP盤とは異なります。

専用の再生機があります。

念願かなって手に入れた極上品とのこと。

なんと、音量の調整ができません。

電気を使わないからです。

もちろん手巻き式です。

針を落とすと、バチバチ、という音の後に、音色が立ち現れます。

私は、はじめてその音を聴いて、驚きました。

すごい臨場感。

高音域から低音域まで、モノラルで再現される、ぶ厚い音のバイブレーション。

先ほど音色、と書きましたが、まるでそこに、演奏家あるいは歌手が、立ち現れるようです。

私にとって、まったく新しい音楽体験でした。

お客さんが帰ってしまうと、木漏れ日のさす、吹抜けの広いフロアで、窓の外の美しい林を眺めながら、いい音楽を聴く。

そして、語り合う。

素敵なライフスタイルです。

そう、たしか私が、キューバ旅行の報告をしに、行った時だったと思います。

キューバの人たちは、みんな幸せ。

物は少なくても、楽しい生活と、まわりの仲間、家族と、いい環境、いい音楽・・・。

他にいったい何が必要なの?

キューバの人が、私に言った言葉です。

そう、他に何が必要?

音楽を一緒に聴きながら、お互いこの言葉に、力強く共感しました。

それからの一年、私はこのテーマを、さらに深く、学んでいくことになりました。

那須のコーヒーイベントから二日後。

いつもながら東京に戻りたくなく、名残を惜しんで、蕎麦と音楽で過ごしていると、お店の電話がなりました。

これから柴田さんが、蕎麦を食べに来るとのこと。

イベントでは、コーヒー関係者でもない私が、わざわざ話をかけにいく余裕もありませんでした。

どちらかと言うと、エチオピアと出会ったこと、そこに至る旅の経緯、なんかのディテールを聞いてみたい、と思っていました。

私はといえば、最近やっと中米に行って、コーヒーのおいしさに初めて感動し、興味をもった、ことくらいが、話のフックでしょうか。

今こうして書きながら、あらためて、その時点での私の「コーヒー関係度」が、その程度であったことに、驚きました。

すでにこの時、何かしらコーヒービジネスを始めようとしていたように思いましたが、それは、記憶による勝手な、先走りだったようです。

SP盤の古い音楽を聴きながら、柴田さんから、たくさんのお話を伺うことができました。

そもそもなぜエチオピアに行ったか、そこに行きつくまでの、長い道のり。

さまざまな人との出会い、そして、それぞれの、きっかけ。

結果として、そこに行きついた、長いストーリー。

多くの人に知ってもらえるのは、ほんの最後の、断片でしかありません。

あるいは、それしか必要とされないことも、多いかもしれません。

私も、キューバやパナマ、そして、いまここにいること、に至った道のりを、ほとんど全て話したと思います。

不思議です。

これからの出会いもそうですが、何かきっかけを与えてくれる人とは、知らずに自分の辿ってきた道のりを、ほとんどすべて話してしまうようです。

もちろんお互いに。

しかも、はじめて会った、その短時間で。

これまで、があるから、これから、がある。

この時、まだ近くはないけれど、自分の進むべき航路と、その先に見える陸地が、かすかに、でも確固とした存在で、見えてきました。

生きていく、長い航路で出会う、水先案内人。

おなじ、旅をする仲間です。

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